モンスーン・ウェディング』

この映画を見るとインド映画のレベルの高さを否が応にも実感してしまう、元気がない時や少し寂しい時に見るとなおのことその良さが味わえる珠玉の一本だと思います. 2001年にヴェネチアで金獅子賞を受賞しただけあって 『ボンベイ』 と同じく、非常にオススメしたい映画ですね. インドの伝統に則った結婚式というのはモンスーンの時期に絢爛で盛大に行うものらしく、無論たくさんの親戚縁者が集まり、多くのスタッフが裏で活躍する豪華なもの. となればもちろんそこにはたくさんの人生模様も垣間見れるわけで、そんな様々な人生模様を群像劇として描いたのがこの映画なんです. でも群像劇といっても、仕事仲間との不倫関係を清算して父親が勧める相手との結婚に臨もうとする女性アディティの物語を中心に描かれる家族の物語. 各エピソードの主人公たちがこのアディティのようにみんな心の整理がつかず悩んでいる人ばかりなんですが、逆にそこがこの映画の一番いいところのように思います. というのも結婚式というのは新たな人生の門出を祝う非常に大切な儀式. 誰か祝福するということはまず自分が最低限幸せでなければ出来ない行動ですよね. ですから各エピソードの主人公たちが大切な人のために、そして自分のためも悩みを解決しようともがく様がどれもすごく人間味があって、全く「作られた感」がないんです. 実際に結婚式に参加されたことのある方なら理解できると思いますが、不思議なことに結婚式会場ほど様々な人生模様が見れる場所ってそうはないんですよね. 新たな出会いに期待する人、幸せのお裾分けを望んでいる人、大切な人の晴れ姿を目に焼き付けたい人など、どの人もただ純粋に愛を求めているように見えるのです. ですからこの映画も同じく、みんなただ純粋に愛を求めているだけなんです. そしてその頑張りに神様が手助けしてくれるように降らせてくれる雨. まるで何もかもこの雨と一緒に涙で流してリセットしてしまいなさい・・・と言われているような、何か大きく温かいものに包まれたかのようなものを感じました. もうすぐジューン・ブライドの季節ですが、その前に是非一度見ていただきたいと思える素晴らしい映画でした. 深夜らじお@の映画館 はまだまだ独身貴族でいるつもりです.